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快楽の奴隷
第18章 なくして、得るもの
「シェフこそ休んでください。私、片付けますから」

気力を振り絞り腕を捲った花純を、シェフは「いいからいいから」と言ってキッチンから追い出す。
最早体力の限界だった花純はその言葉に甘えて着替えを済ませる。

「一緒に帰ろうか?」
「あ、はい」

先に着替え終わっていた城と共に花純がレストランを出たのは夜の十時半過ぎだった。

「あー……流石に疲れましたねー……」
「……そうだね」
「毎年イブはあんな感じなんですか?」
「……うん、まあ……そうかな……」

ぎこちなく途切れ途切れの返事をする城を見て、花純は嫌な予感を巡らす。
そして今さらながらシェフの「イブなんだしさ」という言葉の意味を悟った。
『シェフも城さんの気持ちを知ってて……』
花純は顔を強張らせて歩みを速くする。

「あの……私、友達と約束があるからここで……」

縁もゆかりもない曲がり角で、不自然すぎることを唐突に口にした花純はその場から立ち去ろうと急く。


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