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快楽の奴隷
第18章 なくして、得るもの
部屋に戻ると玄関には申し訳程度に小さなツリーが飾られていた。
恋人を作らない鈴子は観るともなしにクリスマスイブ特別番組の恋愛ドラマをかけていた。

「ただいまー」

動揺を隠して明るい声をかける。

「おかえりー。ケーキとチキン、冷蔵庫に入ってるから」

首だけで振り返った鈴子に礼を言い、テーブルに並べる。
スープを入れて席についたところで鈴子がニヤニヤと笑いながらテーブルにやって来た。

「何かあったでしょ?」
「何かって……?」
「隠しても無駄。花純はすぐに声や態度に出るんだから」

長年の付き合いというのはこういうときにややこしいな、と花純は力なく笑う。

「前言ってたコックの彼?」

図星を衝かれ、仕方なく頷く。

「告白された」
「ヘェー!! よかったね」
「よくないよ」

木製の匙で底に溜まっている粉末スープの溶け残りを掻き混ぜながら答えた。

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