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快楽の奴隷
第18章 なくして、得るもの
「まだ作家センセイ引き摺ってるの?」
「そう言う言い方はやめて……引き摺ってるんじゃなくて、いつまでも愛してるの……」

花純は声を尖らせて親友を軽く睨む。

「いつまでも愛してる、と思いたいんでしょ」
「違う。心はそんな簡単に変われないの……」

流石に煽られてると気付いた彼女は、逆に冷静さを取り戻して食事に意識を向けようとする。
しかし鈴子の追撃は続く。

「そんなに好きならなんで逃げてきたのよ?」
「逃げた訳じゃ……」

否定しかけた口が止まる。
逃げてきたというのは当たってはいないが、間違ってもいないのかもしれないと思ってしまったから。
姿を消すこと以外に高梨の創作意欲を引き出す方法は、本当になかったのだろうか?
書けなくなる高梨を見るのが辛くて、逃げ出した。
悔しいがそれは完全に否定できるものではなかった。

「もういいんだよ、花純……」

鈴子はそれまでの意地の悪い声が嘘のように優しい声に変わる。
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