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快楽の奴隷
第18章 なくして、得るもの
城は宣言通り、翌日からも変わりなく花純に普通に接してくれた。
その優しさに甘えて彼女もイブの出来事はなかったように過ごす。
変に優しすぎず、かといって八つ当たりのようなこともせず、花純を後輩として育てようとしてくれていた。
『こんな人を好きになれば……私も幸せになれるのかな?』
時おりそんな風に考えてしまう自分がいて、その度に花純は己を厳しく戒めていた。

年が明け、正月のぼんやりした空気が消えかけたある日、花純はスマートフォンの画面を見て息が止まった。

『幻野イルマ最新作「或る愛のかたち」予約開始』

そのたった一行だけで彼女の血液は激流のように身体を巡った。
慌ててクリックし、画面の切り替わりをもどかしく待つ。

『「湖畔を抜けて森の中へ」の幻野イルマが放つ愛の問題作登場。今回は盲目になった作家と、それを支える家政婦の歪な性愛の物語』

短い情報を何度も読み返す。
脳内に麻薬を打たれたような恍惚が広がり、涙が溢れて手が震えていた。

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