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快楽の奴隷
第18章 なくして、得るもの
呪印のように彼女の身体の中には高梨が刻まれていた。
想うだけで身体が熱く火照り、快楽に導いてくれた指や舌、猛りを想い出してしまう。

書籍の発売日、花純は仕事を休み書店に並んでいた。
もちろん彼女の他にシャッター前で待つものなどいない。
店がオープンとなると彼女は脇目も降らず官能小説の書棚に向かい、平積みされていた幻野イルマの新刊を競うにように手に取った。

『或る愛のかたち』

前作のヒットからか異例のハードカバーでの発売だった。
美しい装丁の冊子を手に取ると、花純は我が子のように胸元で抱き締める。
一瞬で熱を持った目頭から涙が溢れ、頬を伝って流れていく。

「高梨さんっ……」

朝一番の客の奇行を店員は唖然として眺めていたが、そんなことは気にもならなかった。

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