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快楽の奴隷
第19章 快楽の奴隷
それでも構わずに鈴子は続ける。

「高梨さんのところ、行ってみたら?」

今度は聞こえている自信があった。
花純はびくんと大きく肩を震わせ、目を見開いたからだ。

「そうね……私も高梨さんのところへ……逝ってみようかな……」

力なく笑う花純は死相が漂うほど、危うかった。

「そ、そういう意味じゃなくてっ!! 高梨さんの家に行ってみたらって意味でっ……」
「分かってるよ……冗談……」

冗談なんて言える状態には見えなかった。
返す言葉が見つからず、困惑していると花純が再び口を開く。

「行きたくないの……高梨さんの遺影なんて見たくない……」
「花純……」
「無駄だって分かってる……分かってるけど……でもっ……認めたくないのっ……高梨さんが死んでしまったなんてっ!!」

慚愧の念で歪ませた顔から涙の滴が溢れ出ていた。
花純の手は無意識に鈴子の腕を掴み、痛いほどに食い込ませていた。
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