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快楽の奴隷
第19章 快楽の奴隷
その手首に手を添え、鈴子は親友の瞳を見詰めていた。

「最期にお別れを言って……また歩き出して? ……そうじゃないと高梨さんもきっと悲しむよ……」
「分かってる……分かってるよ、そんなことっ……でもっ……」

花純は声をあげて泣き崩れた。
今の彼女は生きる意味を見失っていた。
『このまま死んで楽になりたい』
そんなことばかりを願ってしまう。

「きちんとお別れを告げて……高梨さんの声を胸の中で聞いてみて……ね?」

今の花純の心に声を届けられるのは高梨しかいない。
何もしてやれない無力さに悔し涙を流しながら、鈴子は高梨に託した。
最愛の恋人に彼が託した言葉は、きっとある。
そう信じていた。
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