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快楽の奴隷
第19章 快楽の奴隷
門に背を向けかけた瞬間、玄関の扉が開いた。

「二階の窓からお見掛けしまして……やはり沼田様でしたか……お久しぶりです」
「曽根さんっ……」

現れたのは執事の曽根であった。
一瞬浮かびかけた花純の笑顔は着地点を失い、泣き出しそうな微笑みで落ち着く。

出直すタイミングを失った彼女は、促されるままにリビングに来てしまっていた。
花純は居心地悪く、縮こまってソファーに座る。

「本当にお久しぶりです……」

曽根は紅茶を用意し終えると、それを彼女の前に置き、自らも正面のソファーに腰掛けた。

「あのっ……」
「ご主人様は最期まで貴女を愛されてました……」

花純の断罪を聞かされる前に、曽根は言葉を被せた。

「幻野イルマの最後の作品は貴方への愛で綴られましたから……」
「…………はい。読ませて頂きました」
「いい作品でしたね……幻野イルマ最高傑作だと思います」

曽根の顔には邪気が微塵もなく、慈しむような視線で花純を包んでいた。

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