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快楽の奴隷
第19章 快楽の奴隷
それが逆に花純を苦しめた。
お前がご主人様を殺したようなものだと厳しく糾弾された方がずっとましだった。

「妖しい世界観に真っ直ぐな愛が貫かれていて--」
「すいませんっ!! 私のせいで……」

いたたまれなくなり、花純は会話を遮って、頭を下げ謝った。
曽根は寂しそうに笑ってカップをソーサの上に静かに置いた。

「頭を上げて下さい。貴女は何も罪を犯してはいませんよ?」
「私がっ!! 私が……私が高梨さんの前から逃げたからっ……」
「逃げたんですか?」

曽根が静かに問い質す。

「貴女はご主人様から逃げたんですか?」

もう一度、ゆっくりと繰り返して訊ねる。
考えることが怖くて、花純は頭を大きく横に振りながら呻く。

「逃げました。逃げたんです。書けなくなる高梨さんが怖くてっ……逃げてしまったんですっ!!」
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