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快楽の奴隷
第19章 快楽の奴隷
「さぁ……それはご主人様しか分かりません……ただ……全てやり尽くした、そんな風に思われたのかもしれません」
「全てやり尽くした……?」
「はい。幻野イルマとして、ご主人様は全ての仕事を成し遂げたと思われたのかもしれませんね……」

曽根は花純に表情を見られないようにか、それとも溢れた涙を溢さないためか、斜め上の天井を見上げて答えた。

「そんな……」
「ご主人様の仏壇はありません……そんなもの置くなと言うのがご主人様の昔からの口癖でしたから……まさかこんなに早くその指示に従う日が来るとは思いませんでしたけど」

高梨らしい言葉に思わず苦笑して涙が溢れた。

「良かったらここで、祈って上げてください……ご主人様にお別れの言葉を……」
「はい……」

花純は鞄から『或る愛のかたち』を取り出し、胸元で抱き締めて目を閉じる。
その瞬間に出逢った時のことが甦った。

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