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快楽の奴隷
第19章 快楽の奴隷
「えっ……嘘っ……なんでっ……」

驚きのあまり腰の力が抜けた花純だが、這うようにして慌てて近付く。
それが亡霊や怨念の類いだとしても構わない。
そんな想いだった。

「久し振りだな、花純……」

もちろんそんな非科学的な存在ではない生身の彼は、しゃがんで花純の頬を潰すように掴んだ。

「高梨さんっ……」

潰された頬のせいでうまく発音できなかったが、泣きながら花純は恋人の名を呼んだ。
先程までとは違う種類の涙が、とめどなく溢れていた。

「俺の死に顔を見に来たのか?」

掴んだ頬を払うように離し、薄笑いを浮かべて立ち上がる。

「馬鹿っ……なんで……」

頭が混乱して、何から言えばいいか分からなかった。
脚を震わせながら、高梨にしがみついて立ち上がる。

「馬鹿はお前だ。死んだのは『幻野イルマ』であって、高梨秋希ではない」

笑いながらそう言うと花純を抱えてソファーの上に、やや乱暴に投げ落とした。

「きゃっ!?」

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