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快楽の奴隷
第19章 快楽の奴隷
「読者は俺の書く官能小説で興奮することを求めている。ふしだらな物語ばかりを書く小説家が今さら説教臭いことを言ったって白けるだけだ。エロ作家の書く濡れ場がない恋愛小説だって読みたくはない」

その言葉に花純は無言で首を振るが、否定の言葉は出せなかった。
官能小説を捨てかけた彼に、もう一度妖しいまでの官能小説を書いて貰いたくて、花純は行方まで眩ませたのだから。

「俺の小説を読んでオナニーをする。それだけだ。俺は常に読者に快楽を与え続けなければならない、そんな存在になったんだ」

高梨は鼻から力が抜けた笑いを洩らした。

「快楽の奴隷だよ、俺は。人々に快楽を与える為だけに小説を書き続けなくてはならない存在だ」
「奴隷だなんてっ……そんなっ……高梨さんは、幻野イルマさんは神です!! 快楽を創造する神様です!!」

感情を昂らせた花純は怒鳴るような声で否定した。

「神でも奴隷でも、そんなことはどっちでもいい……これからは俺の書きたいものを書きたいように書く」

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