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快楽の奴隷
第20章 エピローグ
「また来ますんで……今度こそはちゃんとした官能小説書いてくださいね……」

肩を落とした森崎はそれだけ言うと『GAME』の原稿を持たずに帰っていった。

「なんか……ちょっと可哀想ですね……森崎さん」

流石の花純も敵にならない恋敵に同情してしまう。

「ほっとけ……自分で勝手に会社まで辞めたんだし、呼んでもいないのに家まで押し掛けて来てるだけだ」

移り変わりの早い世の中で、幻野イルマの名前は早くも風化しかけている。
何よりその名前を捨てた高梨本人が一番未練を持っていない。
結局子供は授かれなかった花純だが、今は子供より高梨の新しいデビュー作が生まれることを望んでいた。

「どうしても官能小説以外の作品を書くんですか?」
「ああ。官能小説は書き尽くしたからな。そのうち戻るかもしれないが、今はまったく新しいものが書きたいんだ」
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