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快楽の奴隷
第6章 ロマンスの書き方
「いえっ……そのっ……逢いたかったんで勝手に来ちゃいました……すいません」
「逢いたかったとは?」

高梨は首を捻って胸元から煙草を取り出し、火を着ける。
それは無粋とか惚けているというより、素直に意味を理解していないというような反応だった。

「す、好きな人と逢いたいって……おかしいですか?」

好きだと伝えるのに、哀れなくらいに震えていた。

「えっ……ああ……そう言うことか……」

そこまで言われてはじめて意味を理解した高梨は、煙を吐きながら声を上げずに笑った。

「俺は官能小説を書いてるけど、そういう色恋沙汰の心境っていうのが今一つ分からなくてね」

まだ長い煙草を灰皿で揉み消して苦笑いを浮かべる。

「今は連載の締め切りに追われてるんだ」
「そうだったんですか。すいません、そんな忙しいときにっ」

自分の意見はおろか、存在までも圧し殺そうと、花純は慌てて帰るために立ち上がる。
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