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快楽の奴隷
第6章 ロマンスの書き方
「いや、いい」

それを高梨が手のひらで制する。

「むしろちょうどよかった。編集者が女性好みのラブロマンスを書けと煩いから書いてるんだが、どうしてもその、ロマンスとやらの部分がうまく書けなくて止まっていたんだ」
「はぁ……」

上げかけた腰をソファーに落として花純が曖昧に頷く。
ロマンスをバカにしたような口振りだったが、困っているのに嘘はない様子だった。

「顔が見たいから逢いに来た。そんな感覚を知りたかったんだ」
「……失礼ですけど、高梨さんはそんな気分になったこと、ないんですか?」
「ない。恋愛だとかロマンスというのはセックスを綺麗な包み紙で覆い隠すようなものだと思っている」
「覆い隠す、ですか?」
「セックスしたいけどそうは言えないから愛してるだの言い訳をしているだけだ。違うか?」

あまりにも偏った小説家の言葉は呆れを通り越えて笑いすらこみ上げてくる。

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