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快楽の奴隷
第6章 ロマンスの書き方
「そんなことないと思いますよ。男の人はそうかもしれないけど、少なくとも女の人は好きでもない人とセックスをしたいなんて思いませんから」
「ヘェ……それじゃ君は俺の正体を知る前、電車の中で痴漢され、トイレでセックスしたときも俺が好きだったというわけか?」

その質問はそれまでの本当に意味がわからないという雰囲気ではなく、明らかにからかっているのがわかる口振りだった。

「そういう発言がロマンスを理解できない要因だと思いますよ?」
「そうなのか? ますます解らなくなったな……」

笑いながら立ち上がると、高梨は壁にかかったキーホルダーから車の鍵を手に取った。

「じゃあ行くか」
「行くってどこに?」
「ドライブだよ。今はドライブのシーンを書いてる。実際にドライブに行き、ロマンスの博士号をお持ちの沼田花純先生にご教授願おうと思ってね」
「そこは『実際に花純とロマンスを体験すれば書けそうだ』とか言うんですよ。それがロマンスというものです」
「なるほど。陳腐に嘘っぽく言えばロマンスになるというわけか。勉強になるな」

減らず口を叩きながら高梨はガレージへと向かった。
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