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快楽の奴隷
第6章 ロマンスの書き方
高梨の愛車であるマセラティのグランツーリズモの流線形でしなやかな車体は、車に詳しくない花純でも高級感を感じ取れた。
イタリアの高級車に乗り込んだ二人は海岸線の道を走る。

流れ行く景色は目新しいものではなかったが、憧れの作家の助手席から眺めると心踊るものがある。

「でも意外です。高梨さんがロマンチックというものを理解していないなんて」
「そうか? 俺の作品なんて好き放題セックスを愉しむ話ばかりだろ?」

横目で花純を捉えながら高梨は答える。

「確かにそういうものが多いですけど『記憶の恋人』なんてとてもロマンチックじゃないですか」

花純は彼の作品のタイトルを上げる。
その小説は三年前に死に別れた恋人を忘れられないヒロインが、その恋人によく似た男性と恋をするストーリーだった。

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