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快楽の奴隷
第6章 ロマンスの書き方
「花純から振ってきたんだろ?」

不服そうに呟いてから高梨はタバコに火を着けた。
暗闇の中で灯るオイルライターの火はオレンジ色に高梨の顔を浮かび上がらせた。
揮発性の高そうなオイルの香りと紫煙の燻すような香りが潮風に乗って花純の鼻腔に届く。

「海を眺めながらロマンチックな台詞か……」
「そう……ヒロインが育った田舎に彼氏がやって来て、海を見るんだ……彼女が生まれ育ったとこを見て、彼氏は更にヒロインを好きになった。それをどう伝えるべきかを悩んでる彼氏の横顔を見て、ヒロインが彼氏に告げる言葉……」

所々に月明かりを揺らす黒い水面を遠目で眺めながら、高梨はタバコの煙を立てて、思考を巡らせていた。
はじめて見る創作中の高梨の横顔は、花純にはとてもセクシーに思えた。

「タバコ吸っていたらキス出来ないんですけど……というのはどうですか?」

しっとりと濡れたような湿り気のある花純の囁きに、高梨は微笑を浮かべた。

「陳腐だな……」

高梨は吸いさしの煙草を携帯灰皿に捩じ込み、花純と唇を重ねる。
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