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快楽の奴隷
第6章 ロマンスの書き方
それはノンスモーカーの花純には燻されたように煙たくて、苦い味のするキスだった。
それなのに彼女は舌を伸ばしてそれを愉しむ。

高梨は花純の髪に指を入れ、引き寄せながら彼女の唇や舌を責める。
夜風を受けながらする夢中のキスは二人を充分にロマンスへと導いていた。

高梨の手の甲に自らの手のひらを重ね、きゅっと握る。
物語を紡ぎ出すその指を独り占めした気分が、彼女を恍惚へと誘う。

高梨はもう片方の手で花純の乳房を触れる。

「駄目」

そのとたんに花純はキスをほどいて身を引く。

「ロマンチックな展開だとここまでです。これ以上するとロマンスが消えてやらしくなっちゃうから」
「俺が書いてるのはやらしい小説だから構わないんだよ」

なおも手を伸ばす高梨から逃げるように、花純は防波堤から飛び降りて駐車場に降りた。
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