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快楽の奴隷
第6章 ロマンスの書き方
高梨は一心不乱に指を動かしていた。
外灯も少ない暗闇。ディスプレイの青白い光が険しい彼の顔を照らしていた。
煮詰まっていた頭の中は、悔しいが花純のお陰で澄み渡っている。
溢れてくる言葉と展開を指先で文字に変えていった。
語りかけるのが憚られる気迫を纏った高梨の姿を見て、花純は心が弾んでいた。
鬼気迫るほどのその姿に高梨の小説への情熱を感じ取っていた。
暮らしに困っていない高梨が、なぜそこまで真剣に官能小説を書き続けているのか少し分かった気がした。

高梨はとにかく小説が書きたくて仕方ない。
その姿を見れば語らなくてもそれが伝わってきた。

「終わった」

深く息を吐きながら呟くと、高梨はパソコンを閉じて夜空を仰いだ。

「お疲れ様です」

花純は缶コーヒーを高梨に差し出して微笑む。
しかし高梨はその手首ごと引っ張って花純を抱き寄せた。

「きゃっ!?」

体勢を崩した彼女は缶コーヒーを落として、高梨の腕の中にすっぽりと収まってしまう。
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