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虹色の楽譜
第5章 青
穏やかに嬉しさを表現する奏くんとは裏腹に
私は何か落ち着かなかった。
「俺の、マンションに行く?」
確かに付き合っている期間は短いけど
それでも奏くんの部屋に行くのは初めてだった。
学生なのに、マンション?と思ったけど。
そこは音大生専用のマンションで。
各部屋にグランドピアノが置けるようになっていて
もちろん防音だった。
お祝いにもらった大きな花束を玄関に置いて
ネクタイをゆるめながら
ピアノの前の椅子に座った。
ゆっくりと私に向かって手を伸ばして。
私はその手に吸い寄せられるように、近寄って行った。
「茜さん。ありがとう。茜さんのおかげで
何年振りだろう。コンクールで優勝できたよ」
私は、何も、してないよ。
「柳下さんから何か俺の事は聞いてる?」
苦笑いした奏くんに私は小さくうなづいた。
「録音の時に柳下さんがいた事は気が付いてたんだ。
あの人は、俺がコンクールに出始める前に良く出ていた。
彼の演奏は今でも覚えているよ」
「柳下さんが、奏くんは天才だって」
「・・・モノトーンの?」
決していやみではなく。
静かに笑いながらそう言った。
自分で。
この言葉を普通に言えるようになるまでに。
この人は一体どれだけの悔しい思いをしてきたんだろう。
私は何か落ち着かなかった。
「俺の、マンションに行く?」
確かに付き合っている期間は短いけど
それでも奏くんの部屋に行くのは初めてだった。
学生なのに、マンション?と思ったけど。
そこは音大生専用のマンションで。
各部屋にグランドピアノが置けるようになっていて
もちろん防音だった。
お祝いにもらった大きな花束を玄関に置いて
ネクタイをゆるめながら
ピアノの前の椅子に座った。
ゆっくりと私に向かって手を伸ばして。
私はその手に吸い寄せられるように、近寄って行った。
「茜さん。ありがとう。茜さんのおかげで
何年振りだろう。コンクールで優勝できたよ」
私は、何も、してないよ。
「柳下さんから何か俺の事は聞いてる?」
苦笑いした奏くんに私は小さくうなづいた。
「録音の時に柳下さんがいた事は気が付いてたんだ。
あの人は、俺がコンクールに出始める前に良く出ていた。
彼の演奏は今でも覚えているよ」
「柳下さんが、奏くんは天才だって」
「・・・モノトーンの?」
決していやみではなく。
静かに笑いながらそう言った。
自分で。
この言葉を普通に言えるようになるまでに。
この人は一体どれだけの悔しい思いをしてきたんだろう。