- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
オーバーナイトケース
第3章 不思議な出会い
そんな私たちに亀裂が入る出来事が起こったのは、
このオーバーナイトケースを手に入れてから1ヶ月。
いつものように金曜の夜、仕事を終え彼の部屋へとやって来た時の事だ。
彼の部屋のある4階でエレベーターを降り、彼の部屋のチャイムを鳴らすと
一拍間おいてドアのロックを外す音がして、ゆっくりとドアがあいた。
そこに立っていたのは・・写真で見た浩介の妻だった。
いぶかしそうな目つきで私を見ているが、
それはただ単に知らない人、という感じの目だった。
奥のほうで人の気配がする。
きっと浩介もいるんだ・・
私はとっさに演技をした。
「あ・・あれ、純子ちゃんは?」
「はい?」
「あの・・吉田純子ちゃんのお友達ですか?」
「いえ、違いますけど。お部屋お間違いじゃないですか?」
「え?だってここ、312号室じゃないの?」
「いえ、ここ4階ですよ」
「えっ?うっそ!いやだ!階間違えた!
ごめんなさい!てっきり3階だと・・大変失礼しました!ごめんなさい!」