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揺れる恋 めぐる愛
第8章 羨望と嫉妬
目を閉じた瞬間、脳裏に先輩の笑顔がぼんやりと浮かんだ。

その笑顔ひとつで全てがあの頃に引き戻される……

せっかく決めたはずなのに嵐のように訳のわからないモノが込み上げ、

心臓を鷲掴みされたように胸が締め付けられる。

もう何で苦しいのか、ここがどこで……

私が誰なのかわからなくなる。


先輩が微笑むと包み込まれるような優しい空気に何度癒され励まされたか……

その笑顔が本当に好きだった。

ぼろ雑巾のように捨てられ、傷つき、なにも信じられなくなっていた

私の目線に降りてきて歩幅に合わせ、寄り添うように手を引いてくれた。

そんな先輩だから……

信じることができた。


先輩の表情が一変し私に向かって険しい表情をして……

拳を振り上げてくる。

それでも私はその場に立ち尽くしたまま、逃げることができない。


そう、今夜とうとう私は先輩を完全に裏切る。

直接別れを告げられたわけじゃないのに……

それなのに一方的に裏切るのだ。

目の前の複雑だが切ないこの男を、

もうこれ以上放っておくことができない……


でもそんなの所詮都合のいい言い訳だ。

私は先輩を本当に切り捨てるんだ。

もう、もう信じることが……

待つことが……

健気な女を演じ続けることが……

心底嫌になった。
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