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揺れる恋 めぐる愛
第8章 羨望と嫉妬
「今だけでいいから……

今、この瞬間(とき)だけでいいから……

俺だけを」

真っ直ぐ見つめてくる瞳の奥に浮かぶのはいったい何なんだろう……


お互いの視線が絡み合い、その揺らぐ瞳に彼の想いの強さを見て取れた。

この人も断ちきれない想いにもがき苦しんだことがあるのだろうか?


ふと浮かんだのはあの後姿。もしや……

あの浴衣の?

間近で両肩を握り締めたままで、一層見開かれた瞳……

私の脳内が漏れているのだろうか?

そう思わざる終えない反応に、気味悪さと共に益々胸が締め付けられた。


選んで決めたつもりの直後ですら……

こんなにいとも容易くブレて流され拘る自分。

そんな揺れ動く心と躰に戸惑い、

封印したはずの過去の忌々しい記憶にまで囚われる。


「たいきさん。もうあなただけ……

私にはあなたしかいないから……」

こんな陳腐な言葉が何の意味をなすのだろう?

それでも私は言わずにいられなかった。

この人に必要なのはおそらく時間。

私はこれから長い時間をかけてその言葉を証明していくしか術がない。


もう何度目だろう?

大きな掌が私の背中に回ってゆっくりと躰を包み込んだ。

躰にしみわたる温もりを感じながら……

もう離したくないと思い、彼を心ごと強く抱きしめ返した。
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