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揺れる恋 めぐる愛
第9章 束縛と自由
「たいきさん!?」

出ない声を必死で振り絞り、声色が裏返った。

ただ抱き締めて欲しくて……

感じた予感をさっきまで注いでくれたその温もりで振り払って欲しくて……

跳ね起きた。


「……」

それでも彼は向き直ることなく自分の言いたいことを吐き捨てたまま、

私を一人置き去り引き戸をぴしゃりを閉め部屋を出て行ってしまった。


裸のままその吐き捨てた台詞と後ろ姿が瞼に焼き付き、

身も心も凍りつく。

意識が遠のきそうだ……


何が本当で何が嘘なのだろう?

私はいったい何を信じたらいいのだろうか?

そんなことが頭をぐるぐる回っているうちに脱力し、

ベッドの上でへたり込むと、どっと涙が溢れてきた。


霞んで見えない視界は今の私の心と同じで……

どうしてこうも幾度となく繰り返しこの男に振り回されるのだろう。

近づいたと思えば突き放され、逃げようとすれば強引に抱き寄せられ、

水面で風に弄ばれて揺れる木の葉のようにもどかしく

歯がゆいことばかりで……

悔しさから流れる涙を堪えようと唇をぎゅっと強く噛みしめた。


こんなことで……

これしきのことで泣きたくなんかない。

何もかも捨ててしまうほどの覚悟なしに

この男を手に入れるのは無理なんじゃないだろうか?

それは最初から分かっていたはずの事で……
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