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揺れる恋 めぐる愛
第9章 束縛と自由
彼の抱える得体のしれない重苦しいものも含め、

その全てを受け入れると決めたのだから、

訳の分からない言葉一つで、絶望している場合じゃない。


先輩の時みたいに忽然と消えてしまってどうしようもない状況じゃない。

その意味を聞こうともせず、勝手によくない方に考えて、

決めつけてしまっても……

悪くなることはあってもよくなることはないし、何も変わらない。

そう、何も変わりはしないのだ。


ハッと気が付いて、目が覚めたような気がした。

泣くのは彼の本意を、縋り付いて聞いてからでも遅くない。

彼は今、私の家にいるのだから……

目を擦り涙を振り払った。

私は、変わらなければならない。


もうそれ以上悔しさからくる哀しみの涙が零れることはなかった。

とにかく前に進もう……

私は辺りに散らばった下着を身に着け部屋を出る。

引き戸を開け、薄暗い部屋に目を凝らしたが、そこにも彼の姿は……

なかった。


たぶんバスルームなんだろうと思ったが、

このままのあやふやな気持ちで

彼と対峙するのが怖くてとりあえずテーブルの前に座る。


目を閉じると、昨夜の怖いほどに縋り付くような鋭い瞳が浮かんだ。

あの目に嘘偽りはないと信じたから私は全てを明け渡した。

今度は彼が私に対して彼がいいと思うところまでは明け渡すべきだろう……
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