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揺れる恋 めぐる愛
第9章 束縛と自由
どうして「俺なんか……」と自分を卑下するのだろう?

深い物思いに耽っている間に、ふと彼の気配を感じ顔を上げる。

そこに立ち尽す彼と、視線が重苦しく絡み合った。


「俺なんかって……

どういう事なんですか?主任は、私をいったいどうしたいんですか?」

張りつめた空気の中、彼の重苦しく物悲しい瞳に浮かぶもの……

訴えるものが何なのか……

私は息を吸いこむのも忘れる程に見つめながら切り込んだ。

「こんなにも愚かで……

本当にどうしようもない……

そんなくだらない男ってことだよ」

吐き捨てるように言い切る。

しばらく開かれた自分の掌に視線を落としてから、天井を仰ぎ見ていた。

「お前を……」

言葉を選んでいるように語尾が濁る。

「お前の事は……

本気なんだ。柄にもないと何度も自分を否定した。

逃げ出したし、忘れ去ろうと躍起になった。

打ち消しても、揉み潰そうとしても

それでも……

無駄だった」

床にひざまづき項垂れた。

「俺にはもう……

お前しかいない。

それをこれほどまでに思い知らされて、

何もかも晒されて今更手放すことなんで……

できない。

それなのに、俺は……」

「何を言い淀んでいるんですか?主任らしくもない……」

言っていることが支離滅裂で、滅茶苦茶で、訳が分からない。

「実は来月の週末……

どこかの令嬢とホテルで会食することになっている」
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