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揺れる恋 めぐる愛
第9章 束縛と自由
「条件を呑んだ俺はヤツより、マンションと世話係の女をあてがわれた。

そこで、彼女と彼女の息子と俺の奇妙な3人暮らしが始まり、

それは学校を卒業するまで続いた」


「お父さんは……

一緒に住んでくれなかったの?」

「あいつは全く俺に関わろうとしなかった……

ヤツにとって自分以外の人間は、全て利用できるかできないか……

以外の何者でもない。

そんな人でなしと結果的には一緒に住まなくてよかったんだろう。

六才の時、厭きたから俺たち母子を捨て、

その後利用価値ができたから、金を払って俺を養ったまでのこと。

俺はそんなヤツの遺伝子を濃く受け継いだらしく、

どこか人としておかしい。

せめてもの救いは、一緒に住んだ世話係が母親のように接してくれ、

息子と兄弟のように暮らす時間があったことだ。

あの時間がなかったら、俺もヤツのように人でなしになるか、

母のようになってしまったかもしれない……

ヤツの事は心底憎いし嫌いだが、

二人に会わせてくれたことだけは感謝している」

「色々……

あったんですね」

「そうだな?この程度でも色々なんだろうな……」

話しながら立ち上がり、こっちに近づいてきて私の隣に腰を下ろす。

「でもある意味俺もヤツとたいして変わらないよな?

お前の事をなんとか俺だけに縛ろうとして、足掻いているんだから……」

彼は自嘲気味に笑みを浮かべる。
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