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揺れる恋 めぐる愛
第9章 束縛と自由
そんな不安な気持ちを誤魔化すようにキッチンに入り、

冷蔵庫の前に座り込み扉を開ける。

中身を覗いていると、小さなバスルームからシャワーの音が聞こえ始めた。

ふと気になってバスルームに向かうと、案の定タオルがない。

部屋に戻って取り込んでいたタオルを手に再びバスルームに向かう。


「タオルいりますか?」

シャワーが止まり、中から声がする。

「ああ、その辺に置いておいてくれるか?」

「はい……

あのぉ、下着は……」

「後で車のスーツケースを取りに行くからそのままにしておいて……」

「わかりました……」

私の返事を確認したからなのか、またシャワーの音がする。

キッチンに戻り、もう一度冷蔵庫の前にしゃがんで白い扉を見つめた。


こんな感じの朝を過ごした事もあったよなぁ……

そんなことを考えてしまい涙が込み上げてきた。

訳の分からない感情の高ぶりに、

自分自身の事なのに戸惑いながら涙を拭う。

あの頃の暖かく包み込むような優しさに満たされた時間を

何気ない事のようで、当たり前のように思っていた。

今の私はそれをもう望むことすらできないんだろう……

でもそれを選んだのは私自身。私はどこまでも自分本位で……

自由なのだから。

勝ち取ることのできたものと、失ってしまった物を天秤にかけても……

仕方がない。

止めどなく溢れるものは、しばらく止まらなかった。
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