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第10章 懐疑と盲信

「捨てられた？」

私の問いに彼女はただ頷く。

まずは彼女の為にこれ以上言葉を挟まずに、最後まで聞こうと思った。

たぶん今、私が共感してあげないと彼女は

ダメになってしまうのかもしれない。

そう、あの時の私のように…

美咲はしばらく涙を堪えていたが、ぽつぽつと話し始めた。


「だって、それからどうしていいのかわからずに、

数週間ただ仕事と家の往復をしていたんだけど、

家賃の事もあるし、彼がどこにいるのか確かめようと以前会っていた

友達が勤めていたバーに行って、どうしているのか聞いたら…」

そこで言葉に詰まる。

それでも私は彼女が自分の言葉でその先を続けるのを辛抱強く待った。


「…結婚したんだって」

「へっ？！！」

黙っているつもりだったのに、話が最も思わぬ方向に向かい、

間抜けな声が漏れてしまった。

「ごめん…」

私はばつが悪く美咲から顔を背けて謝罪した。

「…だよね。やっぱりそうだよね。

突然こんな話になったら、私だって同じ反応すると思う」


暗い話が増々重みを増し、もうどうしようもない所に向かっている。

ある日ささいな喧嘩で出て行った彼氏。

その数日後には家からも姿を消し、追いかけてみたら

いつの間にか結婚していた？！

そんなことってあるんだろうか…

それはまるで…


私は重い口を開いた。