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揺れる恋 めぐる愛
第10章 懐疑と盲信
「ほんとうに今日はごめんね」

「いいよ。なんか気になったんだ」

私達はあまり深い部分までわからないまま…

ただ受けたであろう傷をかばい合っているようだった。


「ごちそうさまでした」

私はふと彼女の口元に視線が行った。

「ねえ?唇になんか黒いのついてる」

「ああ、これ、ホクロ。下のこの辺の奴でしょ?」

と彼女は自分の下唇を人差し指でさす。

「薄いから口紅をしたら隠れるんだけど…

ご飯食べたからとれたのかな?

ゴミがついてるみたいに見えるよね?よく言われるんだ。

顔も気になるし…

ちょっと化粧室行ってくる」

そう言って、鞄を持ち立ち去った。


独りになると考えるのは…

先輩の事。

美咲には残酷だけど、まだどうなったのか

先がわかるだけでも諦めが付きやすい。

私の場合、いまだに…

何が起こったのかわかっていない。

それでもいつまでもその場で足ふみはできないから…

前に進んだものの…

それでも後ろ髪は完全に握られ、引かれたままだ。

もう今更戻るなんて無理なのははっきりわかっていても…


今の状態に満足しているかと言えばそういうわけではなく…


物思いにふけっていると美咲が戻ってきた。

立ったままテーブルにあるお会計の紙を取り上げて、

「聞いてもらったから、今日はおごらせてね」

そう言って立ち去ろうとする。
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