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揺れる恋 めぐる愛
第10章 懐疑と盲信
基本的に彼は泊まる時の必要なものは持ってきて…

すべて持って帰る。

自分で気に入ったなじみの物を使うのが彼のスタイルらしい。

歯ブラシも、シェイバーや、タオル、なぜかマグカップまで持ってくる。

その潔癖さに最初はひどく怯えたが、それでも特に私に対して細かいことを

求めてくることはなかった。

私が無理強いされて何かする必要がないのは楽チンだったので

そういう人だと思うことにしていた。


いつも突然やってくるのに、どうやってそんなに色々用意しているのか

気になって以前聞いたことがある。

「いつでも私の所に来れるように荷物を持って歩いているの?」

その問いに…

彼は一瞬固まった後、お腹を抱えて笑った。

何故彼が笑い転げるのかさっぱりわからず、ただ茫然と見守る。


「あのなぁ~お前。本当に無邪気すぎだし、自意識過剰だろ?

仕事のトラブルでいつ泊まりや出張になるかはわからないから、

いつも車の中に最低1泊はできる荷物を乗せているだけだよ」

と言われて、本当に恥ずかしい思いをした。

でもその後、唐突に私を抱きしめ頭の上に顎を乗せると

「まあ、この荷物が行きたくもないクレーム対応のためにじゃなくて、

こんなに無邪気で可愛いお前を喰うためのものになるんだけどな」

そんな彼のめったに吐かない甘い言葉に、

耳の端まで真っ赤になってしまうことがあった。
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