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喪われた記憶
第10章 引っ越しの前に
『てゆーかさ』
「はい?」
『いつまで敬語使うつもりなの?』
「…あー、勘弁してください。
そんなすぐには直んないです。」
『…昔の月琴はタメ口だったのに…』
「…すみません。
生憎ですが覚えておりません。」
『なんて都合のいい逃げ道だ…』
そしてお互い顔を見合わせて吹き出す。
「ふふっ…暫くはこれ使いますね。」
『やっと笑ったな。』
彼の表情がふっ…と柔らかくなる。
「…え……と」
『…あ!そうだ!』
私の方に突然身を乗り出してくる。
「…何でしょうか」
嫌な予感しかしないのは何でだろう。
『…俺のこと、いい加減名前で呼んでくれない?』
―――は!?