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藍の果て
第2章 一夫多妻制
2212年
死の惑星と呼ばれていたこの場所も、地球と良く似ていた。
空は青く、緑に包まれて優しい風を運んでくる。
DEADENDの都市の一つ〝パルバナ”も、どこか馴染みやすい雰囲気を持っていた。
田舎町に似た自然の中にあり、人々は農作物を育てたり自給自足という生活が殆どだ。
ただ、大自然には似合わない宮殿の様な大きなお屋敷が建ち並んでいる。
最も裕福な都市と呼ばれる〝パルバナ”は、その大自然の中にある鉱山が資源の源だ。
男たちの殆どは鉱山で鉱石を掘り当てて、職人の手に渡し、装飾品などへと他の都市へと輸出する。
掘り当てる為には落石など命がけだが、大金を手に出来る為に何日も泊りがけで男達は鉱山へと出向いていく。
〝パルバナ”地方の人間は比較的金持ちだ。その為に、力が例えなくともその金という権力こそが最大の武器なのだ。
黄色の肌をして、ふくよかな体格をしている者が多い。
近年では、その体型が社会問題になっている程である。
ここの採掘場も例外ではない。
「おーう、もうちっと休もうぜ」
「さっきから汗がとまらねえ。一息いれたら、また働けるからよ」
恰幅のいい太鼓腹を揺らしながら、男たちは体に不似合いな可愛い大きさのヘルメットを脱いで汗を拭う。
体中泥だらけになって、それが乾き痒くて仕方ないのか足場の悪い地に巨体を下して休ませる。
そんな中でも硬い土を削り、大きな鉱石を積み上げていく小さな身体が一つ。
男たちはその小さな背中を見つめては呆れたように肩をすくめた。
「おい、リオ。お前ずっと働き詰めだろ。良いから、こっち来て休め」
白銀の髪は短く切りそろえられ、大きなTシャツから覗くのは細くしなやかな腕。
顔の半分は覆っているのではないかというゴーグルを嵌めた少年が、振り返って微笑む。
「大丈夫だよ、僕は。皆は休んでて良いから。ここを少しやったら、僕も休憩する」
リオ。そう呼ばれた少年は額の汗を拭って、再びピッケルを構え乾いた音を響かせて採掘を再開する。
パルバナに似合わない雪の様な肌の色。
そう。リオと呼ばれた少年は、あの大惨事、宇宙航空機追突事故の生存者の〝少女”。
リオ・シャーロンだった。