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藍の果て
第2章 一夫多妻制
漸くリオが仕事を済ませたのは、やはり皆が街へと戻る時刻になっての事だった。
大量の鉱石を詰め込んで運ぶのも男手であろうとも困難な重量だ。
体格のいい男たちが一斉に荷を運ぶ。
「しかし、今日も採れたな。戻って皆でやるか?祝杯でも」
「良いなっ!乗った!そういや、あのカジノに最近綺麗なお姉ちゃんが働き始めたらしいぜ?
行ってみねーか?もう誰かのモノになっちまってるかな?」
「誰かのモノになってなくたって、お前のモノになんかなりゃしねーよ」
そうだ、そうだ、と他の男たちが野次を飛ばす。
豪快な笑い声が響くと、街の人たちは男たちが無事帰って来た事を喜ぶのだ。
こんな田舎の男たちの癒しは、女か最近金持ちの遊戯場として使われるようになったカジノだ。
富豪の多いパルバナの民族にとって、カジノは金を使って豪遊出来る娯楽場所。
そこで、女も自由に買えるというのだから、自然と男達の足も赴くようになる。
「リオ。お前もどうだ?カジノの女も良いが、ほら、あの周辺で見かける女は、どれも良い」
「え?僕?」
いきなり話題を振られてリオも思わず苦笑いを滲ませたが、働き疲れの身体が娯楽を求める男は収まりきらない様子で続ける。
「いつまでも女を知らねえなんて、情けねーぞ。一人や二人買っとかないと、いざという時に格好つかねー」
〝また、始まっちゃったな”
リオは心中で呟いた。酒が入ってないので、まだ場の雰囲気は収められるが
この手の話は苦手で居心地が悪く窮屈になる。
何せリオにとって、女を買った所で何の意味すら持たないのだから。
「買う、買わないって、僕……まだ十二歳だよ?」
「ああいう事は早く覚えとくに越した事はねーよ。こいつなんて、もう十四の頃には妻が二人いたってんだから」
リオに話していた男が、傍にいた男の肩を無理やりに引き寄せる。
僅かに垂れ目の優しげな瞳の、こんな力仕事には向かない優男風の男だ。
十四……二年後か。
ぼんやりと頭を過りながらも、乾いた笑いだけを返すのだった。