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藍の果て
第1章 死の惑星
宇宙旅行当日。
搭乗口(トウジョウグチ)から乗り込んだリオは、自身の席についた所で落ち着きがない。
窓から景色を眺めてみたり、身を乗り出そうとしたり、心が躍って仕方ないのだ。
「こら、リオ。大人しくしていなさい。もう直ぐ出発なんだから」
「はーい」
母親に注意を受けた為に、ポケットから一つ飴玉を取り出すと口に放り込んで大人しくなった。
真ん中の席に座っているリオからは両親の様子がそれぞれに見える。
さっきから目を離さずに英字新聞を眺めている父親を覗き込んだ。
「パパ。そのおじさんは誰?」
「ギース・ヴォルド氏だよ。えっと、そうだな……この宇宙航空機を作って皆に夢を届けてくれた、ミレの英雄(ヒーロー)さ」
一面の写真に写る白衣を着た男性を、父親は尊敬のまなざしで見つめている。
この飛行機を作ってくれた人なら、リオも楽しい旅行に行ける事を感謝したい。
「凄いんだね、そのおじさん!私の誕生日に素敵なプレゼントをくれたんだもの」
家族の談笑をしていると機内アナウンスが流れた。
もうじき待ちに待った宇宙へと飛び立つのだ。
航空機は風に乗るようにゴゴゴと大きな音をたてながら地上から浮遊していくのが分かった。
お腹が震えるような感覚。リオは何もかもが初体験だった。
一瞬呼吸の仕方が分からなくなる様な圧迫感が襲ったが、直ぐに慣れる。
夜……というよりも光のない場所、ゆっくりと移動しているように見えるが、窓から見えるのは途方もない闇色だ。
〝大気圏を抜け現在宇宙へとやって参りました。皆さま、窓の方をご覧ください”
機内アナウンスの女性の声に人々は窓へと顔を寄せた。
そこには透き通るような青。闇を包むような鮮やかさを放つ水の惑星だ。
無機質な中に移るそれは、神秘的という言葉も勿体ない程、皆言葉を失った。
「リオ。あれが地球よ」
「……綺麗」
青のベールに包まれた惑星。リオもその美しさに魅せられたのだった。