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藍の果て
第4章 バルトの復讐者

「まさか、パルバナに姿を晦ましてるとは思わなかったぜ、デイジー」
三年前の出来事を全て語りつくした男・シルヴァは真っ直ぐに射貫く位にデイジーを見据えている。
「何故、あの後王位を継がなかった?!何故……、逃げた!?」
吠える様に口にした問いかけは、三年……いや、それ以上の年月のデイジーへの執着が滲んでいた。
自分たちを襲ってきたのは、この男・シルヴァの方なのに…
どうして、この男はこんなにも捨てられた犬の様な目をするのだろう。
しかし、デイジーの口調は先ほどと何も変わらない。
ただ暢気な口調であるものの、瞳は静かにシルヴァを見つめたまま半ば投げやりに呟く。
「王は一人で十分だろ? バルトの王に相応しい人間が継承すべきだ。現にあんたが今、国王だろう?陛下」
「お膳立てされた最強の称号を、名乗り続けろとでも言うつもりか!?」
「……あんたは、分かってない。世の中の人間は〝こうであって欲しい結末”なんてのを、勝手に期待してるもんだ」
困った様に表情を歪めて笑うデイジーは、おどけた調子で肩を竦める。
真意をはぐらかす、冗談で誤魔化す、彼のお決まりの姿勢である。
「バルトの国王が<金儲け主義の形だけの権力者>であるパルバナ民族なんて、誇り高い戦闘種族の連中の一体誰が納得する?
あの時、何が起こったかなんて……バルトの人間は、誰も求めちゃいない。
あんたが国王である事に、意味があるんだ」
何故だかその言葉はリオの胸にも鋭く刺さる。
現実という冷たい固い越えられない塀を、見せつけられたような気分だった。
デイジーはゆっくりと歩いてユリアの身体を起こしに向かう。
気遣う言葉が投げかけられて、何でもないと微笑む彼女の姿がリオの目に映る。
守ってあげなければならない存在、それはとても弱々しく煩わしいものだと思っていたのに……。
二人の姿を見つめるリオの胸中は、何故かどうしようもない程の安堵と同じく、黒くて汚い塊の様な感情が深層にいて、ユリアにそれは確実に向けられている様で自分自身が怖くなったのだった。

