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藍の果て
第5章 生存者
パルバナの街はずれは、夜になると光も乏しく月の光を頼りに夜を過ごす。
時折奏でる虫たちの声が、家の周りに響く。
就寝時間が過ぎても、リオは中々寝付くことが出来なかった。
頭の中をデイジーの言葉が何度も駆け巡る。
『世の中の人間は〝こうであって欲しい結末”なんてのを、勝手に期待してるもんだ』
その過程に意味はない。
自分自身がデイジーに期待されているのは、ただ〝ユリアを守る楯”である事。
その為にここに住み、デイジーからあらゆる護身術も習ってきた。
デイジーについてきた時から、それは理解していたつもりだった。
だからこそ、胸が騒いでいる自分自身に戸惑い、苛立ち、やり切れなさが募っている。
それもこれも、あんな獣の様な男・シルヴァが現れたからだ。
あいつさえ現れなければ、こんな感情に囚われる事もなかった。
あいつさえ……。
「だめだ……。眠れないや」
考えれば考えるほど、喉の渇きに耐え切れなくなり、重い身体を引きずるように布団から起きる。
キッチンへ行けば水もあるはず。
物音をなるべくさせない様に、足音に神経を集中させてゆっくりと移動していく。
「あれ……?」
隣の部屋が少しだけ扉が空いているのがわかる。
隙間からは部屋の灯りが差し込んできて、何やら声らしきものが聞こえてくる。
喋り声?
その弱々しい声に吸い寄せられるように、足取りはその灯りへと向かっていく。
なるべく近づきすぎないよう扉の傍に顔を寄せてみる。
「あ……っ」
思わず驚いた言葉が口をつきそうになって、慌てて自分自身で口を塞いでしまう。