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藍の果て
第6章 契約の妻
ゆっくりと侵入を果たしていく彼を感じてか、ユリアの肩は一瞬強張るが、熱くて狭い彼しか受け入れない穴は、キスをする様にその距離をゼロにしていく。
繋がる。体だけではない、心も溶け合って混ざり合う。
荒く苦しそうな吐息も、時折快楽にのまれないようにユリアを揺さぶる時の切なそうな表情も、全て包み込みたいと思う。
啄むキスをしては離れ、離れては名残惜しくなり、また唇を奪う。
もうどちらの吐息なのか、心音なのか、分らない位に交じり合うと彼の腕の中でユリアは快楽の頂に導かれて果てた。
愛していた。ユリアは、心から彼を。
腕の温もりに包まれる事も、照れた笑顔の似合う少し童顔な顔立ちも。
美男子という程ではないが、愛嬌があるルックスは大きな犬のようだ。
「ユリア。今度、バルトに行くことになったんだ」
「え?」
二人きりの朝食で突然に告げられた彼の言葉。
鉱山で働いている彼は、職人の所まで鉱石を届けるという役目を受けてきたのだ。
「でも、あそこは……とても危険な場所って聞いたわ。大丈夫なの?」
「大丈夫さ。僕だって馬鹿じゃない、長居をするつもりは無いよ。なるべく早く戻ってくるから、そしたらユリアの手料理また食べさせてくれ」
大好きなんだ、とはにかんで笑って答える彼の言葉を、ユリアは信じた。
彼は翌日、ユリアに手を振って家を出て行った。
一日。
一週間。
一月。
出て行ったまま、そのまま、幾ら待てども彼が戻ってくる事はなかった。
連絡を取る術も無い。ユリアは寝る間も惜しんで彼の姿を求めて捜し歩いた。
市場や鉱山の辺り、余り近づいたことも無い砂漠地の周辺まで。
疲労と哀しみに支配されて、身体が日に日に蝕まれていくようだった。
愛する人の面影を追って、布団に包まっては止めどなく涙が溢れる。
泣いて、泣き疲れて眠る。そんな日々が幾日も重なっていた。
そんな、ある日。
衝撃的な真実と、彼との出会いが訪れる。