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藍の果て
第1章 死の惑星
「うう……う……」
痛みも分からない。体の自由も殆ど効かない中で、閉じた瞼に容赦なく光だけが差し込んでくる。
億劫になるほど重い瞼をゆっくりと開けると、暑い程の光が体中を照り付けていた。
背中が焼け付くように熱い。上空の光を受けているからなのか、指を動かすとそこは砂だというのが分かった。
一つ一つ関節が動くかどうか確かめてみる。
指、手、腕、首、肩……足……?
下方の神経に集中を移していくとお腹の辺りに微かな重みを感じる。
首が少し動く、その反動を利用して微かに背を丸めてお腹の上に乗る物を確認しようとした。
「ッ!!?」
それは、〝腕”だ。自分の物ではない。確かに一つ一つ感覚を確かめたのだ。
間違いない。この服には見覚えがあった。
お気に入りの白レースのカーディガン。所々に花の模様があるのが綺麗だと、褒めたことがあった。
「……ま、マ……マ?」
焼け付いてボロきれになった様なカーディガンでも、見間違うはずはない。
垂れ下がったように自分を覆おうとするその白い綺麗な腕は、既に青白く変化していた。
「あ、ああ……あ、あああ…ママ。ま、まま、ママ」
言葉が上手く声にならない。誰かに喉を鷲掴まれたみたいだ。
体温が下がるような感覚がして、眩暈がする。
〝大丈夫よ、大丈夫”
あの言葉が胸に焼き付いて離れない。うそ、うそ、だ。嘘。
誰か全て嘘だと言ってほしい。
全てこれが夢で悪夢だったと……。
しかし、、、
母を呑み込む部品の瓦礫が、所々から立ち上って来る黒い煙が、全てが残酷な現実と語っていた。
引きずるように身体を砂に擦り付けて、何とか脱出する事ができた。
それでも、その場所からは離れることが出来なかった。
泣き叫んでいた人も、後ろの男の子も誰も居ない。
優しいパパも、しっかり者のママも、自分を置いて行ってしまった。
「た……すけ、て。たすけ……てよ」
絞り出すように声を出す。
喉が火傷しているのか空気が余計に吐き出されて大きな声を出せないが、それでも夢中で訴えた。
その時だ。
「あー、今日も収穫無しか」
遠くの方から誰かの声がした。