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藍の果て
第10章 任務
「燃える様な赤い瞳……。サラ!」
「確証は無いわ。さっきも言ったけど、此方の情報は"白人種"。彼は……どう考えても、そうは見えないもの」
「そう……だよね」
淡い期待を抱いたが、リオの望む相手は白人種とは言い難い。
黄色の肌に漆黒の髪色。その容姿に映える赤い瞳だからこそ、人の目を惹き付ける。
五年の月日が経っているのだ。その間、連絡が取れていた訳でもない。
もしかしたら、リオを不安にさせない為に口にした、その場だけの口約束だったのかもしれない。
それでも、リオの胸で輝くネックレスをお守りの様に握りしめた。
「どうする?リオ君。決めるのは、貴方よ」
「行くよ。僕……行って確かめたい」
バルトの中心街のバーには、相変わらず薄暗い空間に様々な人間がやってくる。
そこは白人種が多数を占めているが、治安も悪い街の為に柄の悪そうな大男が談笑したり、スーツ姿のインテリ風の男たちが薬を売買していたりもする。
周囲の顔も見え辛い薄暗い店内は交渉や売買として客などに接触し易い。
その上、現在のリオは誰がどう判断しても女の姿。
自然と普段と違った緊張感を持ちながら、扉を開けた。
ベルの音に何人かの視線が此方へと集中したが、何人かは目当ての人物では無いと視線を逸らす。
何人かはリオを好奇の目で見つめていたものの、声をかける前に様子を伺っている様だった。
好都合だ。このまま周囲が何の行動を起こさないままに、例の謎の赤目の男・ロンへの情報を得ておきたかった。
シェイカーを手にしたカウンターの前に立つ男に声をかける。
「貴方は、ここのマスター?」
「いや、俺は雇われだ。マスターは裏に居るが、どうした?」
たった一人でカウンターにやって来た女・リオを物珍しそうに眺めながら、質問に答えてくれる。
雇われであろうと何度かここに立っているのか、周囲を見渡しながら小声でリオに囁きかける。
「こんな時間に一人で飲みに来るなんて、お嬢ちゃん……無謀過ぎる。悪いことは言わない、帰んな」
「ええ。もちろん、用件が済んだら直ぐにでもここを出て行くつもりよ。その前に、聞きたい事があるの」
随分と使ってない女言葉。サラの口調を日ごろから聞いていて良かったとつくづく思う。