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~花の玉手匣~
第1章 皇子の名

目を醒ますと、枕許に玲利がいた。
結い上げた髻(もとどり)に翡翠の釵(かんざし)、上級女官のお仕着せをあでやかに着こなしている。
「よく眠れた?」
「れい……」
玲利さま、と言いかけて玉蘭は「はっ」と口をつぐんだ。
「大丈夫よ。内侍も乳母も、みんな下がらせているわ」
玲利はたおやかに微笑した。
体面を慮って、いつからか他者がいる前では互いに「お妃さま」「范典侍」と呼び合うようになっていた。
それでも、玉蘭にとっては未だに玲利は「玲利さま」で、二人きりのときに玉蘭がそう呼ぶことを玲利も咎めはしなかった。

