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~花の玉手匣~
第5章 蒼い牙に抱かれて
「今日は少し顔色が悪かったな。服薬の日であったか」
1日の務めを終え、お召しを受けて寝所へ向かうと、寝衣の陛下はすぐさまぼくを懐に掻き抱いた。
陛下の目は誤魔化せない。確かに、昼間のぼくは少しだけ体調が優れなかった。服用している薬の副作用のせいである。
内官は女官と同様、日夜問わず主人の身の回りのお世話をするため、後宮――朝廷で権勢を誇る大臣や上級官僚でさえ立ち入ることができない后妃さま方の御殿――にも自由に昇殿できる。
しかしその代償として、内廷で働く内官になるには一つの条件が課されていた。けだし、生殖能力を失うこと。
けれど、ぼくは少しも迷わなかった。ぼくは生涯、陛下に真心を捧げると誓った。子種は必要なかった。
だから毎月一回、専門医官の前で断種のための薬を飲み干す義務と、腹が壊れやすくなるという副作用を甘んじて受け入れた。