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~花の玉手匣~
第5章 蒼い牙に抱かれて
「皇帝陛下に拝謁いたします」
笛のように澄んだ声音で口上を述べ、彼は御前へ足を進めた。
臙脂色の官服から察するに役職は地方官、おそらく県令級だろう。たいして高貴な身分ではない。
それでも陛下に深揖する身のこなしは実に優雅で、すらりと伸びた背丈と均整の取れた目鼻立ちが彼の品格の高さを裏打ちしていた。
年齢は、見たところ三十路前後。陛下よりほんの少し年下というところだろうか。
彼が入室した瞬間から、彼が醸す一種の「色」に、ぼくの意識は不覚にも散らされていた。