この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
~花の玉手匣~
第5章 蒼い牙に抱かれて
「あ……」
ぼくは慄然とした。
翔龍の服をべっとりと汚す黒い染み。裾からポタポタと墨液が垂れている。
翔龍はしばし言葉を失い、それから呆れたように、諦めたように息を吐き、ぼくを見た。
――謝らなきゃ。不作法を詫びなきゃ。
そう思うのに頭が真っ白で、口が動かない。
そのとき、「ドンッ」と拳で机を叩く音がした。
陛下だった。
立ち上がり、こちらを睨み下ろしている。
「この慮外者が!」
今までに聞いたことがないほど低く、怒りに満ちた声で呟いた。