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~花の玉手匣~
第5章 蒼い牙に抱かれて
やがて日が暮れ、月が昇り、星が瞬き始めてもぼくは許されず、同じ場所に立ち続けていた。
痺れる腕とふくらはぎ。
朦朧とする意識の中、
――不愉快だ
陛下の言葉が何度も耳に蘇る。
そして、あの凍りつくほど冷淡な眼。
ぼくは陛下に愛想をつかされてしまったのだ、と思った。
後悔が胸に渦巻く。
陛下の御前で集中力を欠き、散漫な注意力で墨を手にした自分を殴りたい。
いや、いっそ陛下に殴られたかった。そうすれば、どれほどぼくの心はすっきりするだろう。
けれど陛下はぼくを叱りもせず仕置きを他人に任せ、ただ冷めた目でぼくを見送った。