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~花の玉手匣~
第5章 蒼い牙に抱かれて
ザザッ…
目の前で砂利を踏みしめる音がしたのはその時だった。
総監が相変わらず忌々しげな目をして立っていた。枝鞭を握っている。
「着いてこい。陛下がお呼びだ」
心臓が震えた。
ぼくが盥を地面に置こうとすると、
ビシリッ
総監は鞭をふるった。太腿に鋭い痛みが走る。
「誰が盥を置いていいと言った。そのまま来るんだ。一滴も溢すなよ」
ぼくは両腕で盥を抱えたまま――だから涙まみれの顔を拭うこともできなかった――陛下の寝所に連行された。