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~花の玉手匣~
第5章  蒼い牙に抱かれて

「翔龍、そなたも退がれ。明日、都を離れる前に再度参内し、必ず顔を見せろよ」

「仰せの通りに。この度の陛下の格別のご温情、終生忘れはいたしませぬ」

翔龍は立ち上がり、優雅な物腰で一揖した。

戸口へ向かう。

すれ違いざま軽く会釈を送られた。

昼間、ぼくが墨汁をぶっかけたことは少しも気にしていないようだ。

その寛容さに、ぼくの劣等感はますます募る。それでなくとも涙まみれのボロ顔で盥を持たされている、惨めな有り様なのだ。

ぼくはプイッと目をそらした。



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