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~花の玉手匣~
第5章 蒼い牙に抱かれて
ぼくは目を瞠った。
「陛下……。ぼくは今、心から悔い深く猛省しております。陛下の御前であるまじき不敬を犯しました。忸怩たる思いで胸が張り裂けそうでございます」
声に涙が混じる。どうしたらこの誠意をわかってもらえるだろう。本当に、心から昼間の失敗を反省しているのに――
なのに陛下は意地悪く口の片端を上げ、微笑んだ。
「では具体的に申してみよ。おまえは予に、いかなる不敬を犯した?」
「それは……」
ぼくの不注意で御前に粗悪な墨液を出してしまった。その上、硯ごとひっくり返し騒がせてしまった。陛下の文房四宝を手荒に扱ってしまったのだ。しかも、結果的に陛下の神聖な執務を妨げてしまっている。これ以上の不敬があるだろうか。
ぼくは慎重に言葉を選びつつ、己の失態を懺悔した。
ところが陛下は、「ふんっ」と鼻で笑った。