この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
~花の玉手匣~
第5章 蒼い牙に抱かれて
「おまえは予の主(あるじ)か?」
「…………」
出し抜けの下問に、一瞬、言われたことの意味が分からずきょとんとし、それから慌てて首を横に振った。
「滅相もないことです!」
「では問うが、おまえ、墨を磨るとき何を考えていた」
「ぼくは……」
あのとき、ぼくの心はひどく乱されていた。イライラしていた。
なぜなら――
「おまえは翔龍に妬心を抱いていたな」
言い当てられ、ぼくは紅潮した。
「予が何も気づいていないと思ったか。おまえの顔ばせ、息づかい、所作……すべてに嫉妬が滲み出ていたぞ」
「…………」
執務中の陛下が、そんなにも細かくぼくを観察していたことに驚き、同時に胸が熱くなった。